製作の流れ

【材料出し】


まずは「材料出し」という木材の選定をおこないます。

たくさんの同じ種類の材木の中から、素性の良さそうな材木を選びます。
そして寸法の材が取れるか、節が無いかを調べます。

木の育った環境でかなり狂いが出やすい部分があるので、その個所も見極めます。

【挽き割り】



選りすぐった材料を寸法に合わせて挽き割っていきます。
ただし、木の表面に近い部分はまだ若くて柔らかいため使えません。
(「白太」と呼びます)

そのため、その大部分を切り落とします。
魚で例えるなら、マグロのトロを使うというイメージでしょうか。

そして挽き割ってみて、表面には見えなかった節や曲がりといったクセが出てしまうものは使えないので、また新しい材料を選び直します。
これは長年の経験だけが頼りです。
とはいっても自然が相手ですし、木にも個性がありますのでクセが強い材木に遭遇することもあります。

【直角&寸法揃え】



挽き割った木材は、クセをみながら真っすぐに削って正確に90度を割り出します。
そして厚みや幅を揃えて必要な寸法の部材にしていきます。

【勝手墨】



次に、どの材料をどの位置に使うか印をしていきます。
木目の方向や材料の色味、裏表を確認しながら印をしていきます。
(勝手墨といいます)

【印付け】



加工が必要な箇所に、専門の道具を使って正確に印をしていきます。
鉛筆などでは線が太すぎて使えません。

例えばドアや障子などの中には縦横に格子が入りますが、この印は間隔がピッタリ同じにならないといけません。
それを機械で計算すると割り切れない数字になったりしますが、それでは正確な位置に印をすることができません。

そのため、特殊な方法を使って完全に同じ間隔になるように印をしていきます。
このようなちょっとしたことにも、昔の人の知恵のすばらしさが身に沁みます。

【格子の切り欠き】




次に格子の厚みを半分ずつに切り欠きます。

幅方向はお互いの幅よりも0.1mm~0.2mm程度狭く切り欠きます。
障子は部材が非常に細かいため、反りやねじれが出やすいので、慎重に木のクセを読まなければなりません。

そういった部材には、特に素直な性質の木材を選ぶ必要があります。
このときも印を付ける際には正確さが要求されるため特殊な刃物で極めて細い線で印をします。

【ホゾ穴】




印を付け終わったら、格子になる縦桟と横桟を加工します。
建具は基本的に釘を一本も使わずにくみ上げていくので、凸側の「ホゾ」という部分と凹側の「ホゾ穴」という加工をします。

【ホゾ加工】

     

この「ホゾ」の加工は僅かな誤差も許されません。
特に細かい細工をするような場合は、0.01ミリでも緩いと外れてしまい固いとホゾが穴に入らないため、熟練の技が必要になります。

ホゾには様々なやり方があり、昔から職人によって工夫が積み重ねられてきました。
それらの中から、建具に最も適したホゾで材木を加工します。

【溝の加工】

     

中にガラスやアクリル板などが入る場合は、溝加工の仕上げは機械ではできないため手で仕上げます。

【乾燥】



それぞれの部分の加工が終わったら前に木の表面を濡らしてから自然乾燥させます。
加工の最中に圧力がかかったりしたところを水分を含ませて復元させるためです。

【面取り】

 

次に、部材の角を加工します。

組む時に穴側の木を傷めないように角を保護したり、角が見える箇所に装飾をほどこしたりするためです。
このことを「面を取る」といいます。

これにも非常に多くの技法があるため、建具の目的に合うように加工します。
形状によってはいくつもの工程で加工する場合もあります。

【部材を組む】

   

部材の加工ができたら、それぞれを合わせながら慎重に組んでいきます。
ここでズレていたりするとここまでの苦労が水の泡になってしまいます。

【段差を削る】

   

部材を加工したばかりで部材同士を組み合わせると、縦桟と横桟の境目にほんの僅かですが段差ができます。
パッと見では分からないくらいの段差の場合もあります。

それを「かんな」で平らにします。
「かんな」にも色々な種類があります。

・たくさん削りたいとき
・中くらい削りたいとき
・削り屑が透けるほど薄く削りたいとき
など、目的によって使い分けます。

ただし、今ではこのように細かく「かんな」を使い分けられる職人が少なくなってしまいました。
また「かんな」は目に見えないほどの僅かな厚みを削らなければならないため、きめ細やかなメンテナンスが欠かせませんが、自分で刃を研げなかったり調整ができないとすぐ使い物にならなくなってしまいます。
機械によって便利になった部分もありますが、道具の手入れも職人にとっては非常に大事な技術力の1つなのです。

【搬入・枠の調整】



完成したら現場に搬入します。

ドアなどを取り付けるような場合、ドアの枠は四角に見えて僅かな膨らみやヘコミがあります。
ですので、ここでもまた寸分違わず枠に納まるように調整をします。